
劇的なバックオフィス業務の改革で
DX認定事業者を取得。
日新インダストリー株式会社 代表取締役 川西 紀哉
私たちの暮らしや産業に欠かせない、鉄。その鉄をさびから守るのが「溶融亜鉛めっき」という技術である。日新インダストリー株式会社(新宿区西早稲田)は、1982年の設立以来、溶融亜鉛めっきの補修塗料や補修剤の製造販売を通して、日本のものづくりを支えている。そのトップとして常識にとらわれない発想力と行動力でDX化を実現しているのが、川西紀哉社長だ。DX導入にいたるまでのプロセスや課題感、今後の取り組みなどについて話を聞いた。
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日新インダストリー株式会社
代表取締役 川西 紀哉 氏 -


業種別DXのポイント
- FAXをデジタル化してバックオフィス業務を効率化
- Slackを導入し、社内コミュニケーションの活性化を実現
- アプリやソフトウェアを用途に応じて積極活用
すべてのはじまりは、FAXのデジタル化
川西氏が先代の後を継いで社長に就任したのは、2013年のこと。創業時から順調に成長を遂げてきた同社ではあったが、時代の流れとともに少しずつ売上も落ち込み、会社として試行錯誤している苦難の時期でもあった。“生き残るためには何かを変えなければ” そう決意した川西氏が最初に着手したのが、FAX のデジタル化だった。
当時、製造業のほとんどの企業がFAXを使って業務を行なっていた。注文を紙に書く、送り状をつけて送信する、見積書をチェックする…。取引先から送られてくるFAXを確認するために、わざわざ外出先から会社に戻らなくてはいけないこともあった。こうしたFAXに縛られていた日々の業務を改善するために、Web上でもFAXを確認できるシステムを導入した。社内のデータサーバーの中にFAXのフォルダをつくり、そこにFAX機を紐づけるイメージだ。
「FAXを受信したら全部1つのサーバーに飛ぶようにしたんです。社員にはiPadとスマホを支給しているので、その内容をいつでもどこからでも確認することができます。FAXを受信するとPCの画面上にポップアップが出るので見逃すこともほとんどありません。ファイル名も編集できますし、フォルダ分けしておけば検索も簡単にできます。誰も確認していないFAXはどれか、緊急の対応が必要なのはどのFAXか。そのすべてがすぐにわかるので便利です。経費もサーバーのリース代だけなので1ヶ月1万円ぐらいしかかかりません」。
業務のスピードを劇的に変えたSlackの導入
FAXのデジタル化に成功した川西氏は、FileMakerを活用した見積作成のシステム化、売上ソフトのクラウド化なども実現する。プロジェクトを管理する「Notion(ノーション)」、限られたメンバーで情報を共有する「Trello(トレロ)」、紙の文書をWEB上で操作する「DocuWorks(ドキュワークス)」など、最新のアプリやソフトウェアも用途に合わせて次々に導入。スマホやiPadで巧みに使いこなしている。さらに業務を大きく変えたのが、Slackの導入だ。単なるコミュニケーションツールとしての役割だけではなく、営業報告やSNSに投稿する画像の確認、HPに寄せられた問い合わせメールへの対応など、あらゆる業務の進捗をリアルタイムで確認できるようになった。掲示板の役割も兼ねているため誰が何の業務を担当しているのかもすぐにわかる。その内容をすべて外出先でも確認できるため、川西氏も必要な指示やアドバイスを同時進行で行うことができる。

こうしたさまざまなアイデアは川西氏自ら発想し、すべてトップダウンで実現している。トップの一存で会社のシステムが次々とアップデートされていくことに、社員から抵抗はなかったのだろうか。
「いろんなアプリを使っているので、新しい機能はどんどん増えていきます。多少はビックリするかもしれませんが、慣れてくると、それがいかに便利なことなのかがすぐに実感できます。なぜなら絶対そっちの方がいいんですから。今では、「ここをこう変えてください」と自ら要望を出してくる者や、自分が使いやすいように勝手にカスタマイズしている者もいます。業務がさらに効率化したことで、以前よりも意見が言いやすい環境になっていると思います」。

「DX認定事業者認定」を取得
川西氏のこうした取り組みは少しずつ業界の空気を変えようとしている。当初はFAXのデジタル化を疑問視していた取引先の中にも、手書きのFAXを止める会社があらわれた。「業務の効率化」と「社内の活性化」という目に見える成果を生み出していることで、DXの導入を検討する企業も増えているという。
「製品を出荷する時に必要な運賃表もFAXからデジタルに移行しました。運賃表が確認できるアドレスを作って、そこに空メールを送ると、運賃表が添付されて戻ってくるようになっています。FAXだと文字が潰れて読みづらかったんです。このように業務がどんどんラクになっていくのがDXの醍醐味だと思います」と川西氏は語る。
さらに同社では、コロナ禍以前から、リモートワークができる環境を整えるなど、出社しなくても業務が進められる体制を構築した。残業も原則禁止している。こうした取り組みや働き方の整備などが評価され、2022年4月に経済産業省「DX認定事業者」の認定を取得した。会社のWebサイトには、同社のDXに対する熱い想いが「DX推進宣言」として謳われている。

今秋から博士課程を取得するために大学にも通い始めたという川西氏。社長退任後は、大好きなクラフトビールの工場とバーを経営することが夢だという。好奇心が尽きることのない川西氏に、あらためて今後のDXの方針について聞いた。
「DXの究極の目標は、自分の業務をラクにすることです。現状のシステムである程度理想は実現できていると思っていますが、また新たなアイデアが出てくれば、すぐに取り掛かるつもりです。業務効率化や事業変革を加速させるために今後もDXをさらに推進していきます」。

アドバイス
DXは会社のためにやろうなんて思ったらダメです。自分がいかにラクになるかを考えることです。その方が、きっと導入までのスピードも速いと思います。
場合によっては予算がかかることもありますが、最初は必要最小限のシステムだけで十分です。そこに少し“プラスα”するだけで自分がラクになる。それが結果的に会社のためにもなるんです。
企業情報 | |
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企業名 | 日新インダストリー株式会社 |
本社 | 〒169-0052 東京都新宿区西早稲田2-15-11 イーストンビル西早稲田2F TEL:03-3209-2181 |
代表者 | 代表取締役社長 川西 紀哉 |
設立 | 1982年10月 |
資本金 | 10,000,000円 |
従業員数 | 10名 |
URL |
・HP:https://www.nissin-industry.jp/ ・X:https://x.com/niszinc ・instagram:https://www.instagram.com/nis_zinc/ ・Youtube:https://www.youtube.com/channel/UC0_28jn6iR2z5G76Y8gOC3w ・川西社長instagram:https://www.instagram.com/niszinc_ceo/ ・川西社長X:https://x.com/niszincCEO |